パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-


陽が落ちはじめ、だんだんと暗くなっていく部屋の中で、私はただじっと
息苦しさが無くなるのを待っていた。



きっと全て消えることはないこの苦しさを。



何度立ち上がってもがいても、神様はこうして私を崖から突き落とす。




ーーーガンガン




突然家の扉が叩かれた。

優しいノックとは違って、その音は少し乱暴だった。



なに?



上体を起こして、家のドアの方を見る。


何秒か息を潜めていると、さらに続けて部屋のドアが叩かれる。



ーーガンガンガン




私は急いでドアに向かい、音を立てないようにしてドアスコープを覗いた。



驚くことに、ドアの向こう側にはあの彼がいたのだ。


どうしてここに?



反射的に鍵を開けて扉を開く。



「何してるの?」



走ってきたのか、彼の肩は少しだけ上下していた。

どこか余裕があって落ち着いているいつもの姿とは、少し違う。



瞳の奥に焦りが見える。



「なんでここに…」


私はもう一度彼に問いかけた。…というよりも
問いをこぼしたの方が近いけど。



「自分でも分からない。気が付いたらアンタを追いかけてた」



浅く呼吸をしながら、玄関に入ってくる。

私は彼の体に押されるようにして後退りした。

白銀の隙間から、彼の鋭い瞳がこちらを見下ろしている。



「何かあったのか?」


「え?」


「さっき会った時、様子がおかしかった」



逃げるようにしてその場を後にした先ほどの場面を思い出す。



「あー…私は大丈夫。さっきも言ったでしょ?
だからほら、帰って」



帰そうとドアノブに伸ばした手を、彼に遮られる。



「…なんなの?どうして?」



力一杯押してみても、彼は私が扉を開けるのを拒んだ。


やっぱり、今は彼と一緒にいたくない。



喉の奥が詰まって痛む。

今にも泣き出してしまいそうだった。



「お願い…帰って…」