パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-


彼らみんなも阿久津沢の生徒なのだろうか。

足元を見れば、黒色のズボンの裾に白いラインが入っていた。

3人とも制服の着こなしはばらばらで、それぞれが自分のスタイルで着崩している。



「何してるんだ?」



美しい男が口を開いた。



「…この上のスクールに通ってるって言ったでしょ、今はその帰り。…なんでここに?」


「この上、4階にこいつの姉貴がやってる店があって」



茶髪の男を差しながら上を見上げる。


隣のビルにお店が入っているなんて知らなかった。



「そうなんだ…」



彼にまた会えて嬉しいはずなのに、今は早くこの場所を去りたい。


先ほど塾出会った出来事への苛立ちを消化するには、もう少し時間が必要だ。


私は「じゃあ」と話を切り上げてその場を立ち去ろうと身を翻したところを、手首を掴まれ引き留められる。


驚いて振り返ると、少しだけ眉根を寄せた柳がこちらを見つめていた。



「何かあったか?」



ぎゅっと、掴まれている手首に力がこもるのがわかった。



「…………なにもないよ」



彼が何に気づいて引き留めたのかはわからない。


だけど、その嬉しさよりも
早くどこかへ行ってしまいたい気持ちの方が勝った。


私は嘘をついて彼の手を振り解く。


私の嘘を見抜いているかのように群青色がこちらをじっと見る。


これ以上ここにいると、泣き出してしまいそうで私は挨拶をしてから早足でその場を去った。



彼に自分の弱さを見透かされてるんじゃないかと思って胸が苦しい。


彼の前で、自分の感情をこれ以上顕にしたくない。


感情的になった私を見て、気持ち悪いと思われたくない。


それに

またこの間みたいに彼が私に触れてくれるんじゃないかと期待してしまう自分がいて、

だけどそれはきっと私が今何かに対して腹が立っているから。


彼に慰めてもらえることをどこかで待ってしまっている。


彼を、私の弱さを紛らわす緩衝材のようには扱いたくなかった。




これが野田の言う恋なのだろうか。


この激しく私の胸をかき乱す彼への気持ちの答えは、私にはまだわからない。