彼に嘘はつけない。
首を少しだけ傾げた彼に、私は全てを白状した。
「さっきね…あの鈴木さんにキス、されそうになって…、ごめんなさい…。私…ー」
柳がどんな顔で私を見ているのか見れない。
嫌われちゃったらどうしよう。
「…もう会わないことにしたから」
ごめんなさい、ともう一度謝ると、柳はフッと小さく笑った。
そして、「へぇ」とすっと目を細める。
「……嫌いになった?」
「そんなことで嫌いにならない。無理やりされたんだろ、相手が悪い」
柳は長いまつ毛を伏せながら、私の唇をやさしく撫でた。
「怒らないの…?」
「怒ってない」
安堵の息が漏れる。
柳の寛大さは、底が知れない。
「その、鈴木って男どんな男だ?」
柳がわたしの手のひらを弄びながら言った。
私が思っていたよりもずっと、彼は大人だ。
体の力が抜けて、いつも通りの私に戻ることができた。
「…なんでそんなこと聞くの?」
「気になって」
「…殴りに行ったりしないよね…?」
恐る恐る聞いた私の問いに、柳は「さぁ?」とはぐらかす。
そして、ふ、と笑って「しないよ」と続けた。


