薄暗い部屋に一人きりになると、どっと疲れが押し寄せてきた。


そんな私と重なるみたいに、窓の外から雨の音が聞こえてくる。

その激しい雨音に耳を傾けながら、私は静かに深呼吸した。


ベッドに寄り掛かると、自分の体が自分のものじゃないみたいに重くなる。



まだ頭も痛いし、殴られたところも痛みが増した気がする。



ーコンコンコン



ドアがノックされ、私は驚いて玄関の方を見た。


チャイムを鳴らさず、家のドアをノックするのは一人だけ。



「柳っ!」



私は急いでドアを開けた。

やっぱり、彼だ。



扉を開けた途端、柳は私を確認するなり家の中へ押しやるようにして抱きしめてきた。

彼の後ろでドアが音を立てて閉まる中、私はそっと、彼の背中に手を回す。


彼の体はすっかり雨で濡れていて、髪からは雫が落ちている。


胸の辺りに違和感のある感触があたり、彼から離れると、そこには包帯でぐるぐる巻きの柳の右腕。

手首から上が白い包帯に包まれている。
さらに簡単なギプスがつけられていた。


うで、それ、と気が動転して単語しか口から出てこない。



「ヒビ入ってた」



あの赤く腫れた腕を思い出す。


それに、額や切れた唇にも、ところどころテープや手当が施されている。


全部、私のせいだ。



「ごめん。私が…、」


「アンタは悪くない」



言いかけた言葉にかぶせるようにして柳は声を大きくした。


彼は唇をきゅっと結び、苦しげな表情で目を伏せる。


それ以上、彼の言葉は続かなかった。

眉間にシワが刻まれ、何か言いたげな表情のまま。

なのに、彼は何も言わない。


彼は再び私を抱きしめ、首元に顔を埋めると
安堵のこもった息を吐いた。



「よかった…」



消えてしまいそうな彼の声。



その声を飲み込むように、きつく抱きしめ返した。





私は彼を狭いユニットバスへと連れて行き、置いてあったタオルを彼に被せた。


洗面器のすぐ横にあるバスタブに腰掛けている彼と私の身長はほぼ同じくらい。