パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-


「…葉月を離せ」



柳の低い声が響いた。


笹倉はそれに応えるように、柳に見せつける様にして私の顔を掴んで正面に向けた。


ナイフが目の前できらりと光り、頬をゆっくりと撫でる。


そしてそのまま、引っ張られたままの髪の毛に、ぐっとあてがわれた。



「っ……」



はらり。


私が動いた反動で、ひとつまみほどの髪がナイフに当たって散った。


全身の血の動きが止まり、体の体温が一瞬にして下がる。


もし今動けば、今掴まれている髪は全て切り落ちてしまうだろう。

自分の髪の毛が散っていく様子を、声も出せずに見つめていた私を見て、笹倉が顔に笑みを浮かべて言った。


柳は唇を噛み締め、今にも笹倉に向かって行こうとするのをグッと堪えている。



「じゃあ、動くな」



私と柳、両者に向けられた言葉。

行け、という合図で、笹倉の後ろにいた3人が柳に向かって歩いていく。


そして、そのうちの一人が思い切り振りかぶり、柳を殴打した。


衝撃で柳の足元がゆらりとゆれる。



「動くなっつっただろうがよ!」



柳の視線は、ただひとり、笹倉だけを捉えている。


それなのに、彼はやり返さない。


何度も、何度も、殴られる音が倉庫に響く。


彼の顔、腹、背中に撃ち込まれる。