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目を覚ますと知らない場所にいた。
何度か瞬きを繰り返し、ぼやける視界がクリアになるまで待つ。
寂れて、汚れた、屋根がある…部屋?
窓がないせいで、今が昼か夜なのかもわからない。
辺りを見回そうと体を動かせば、頭に鋭い痛みが走った。
「…っぅ」
そういえば、殴られたんだった。
殴られるって、こんな痛いの?
頭が割れそうだ。
頭に手をやろうにも、私は動けなかった。
ガムテープがぐるぐると手足に巻かれ、自由を奪っている。
両手首は体の後ろで拘束され、そのままパイプ椅子のようなものに座らされていた。
「よう」
低くて、乾いた声が私に向けて発せられる。
「あんたが柳の女だな?」
「…誰なの?」
声の主は私の目の前にいて、腕を組んでこちらを見下ろしていた。
「天塚高校3年、笹倉だ」
なるほど、この人が。と妙に冴えた私の脳みそが一瞬で彼が誰なのか理解した。
天塚でいちばん地位が高い男だ。
つまり、天塚のトップってわけね。
背の高い強面の男が数人、彼の後ろに控えている。
高校生にしては大きい体。手足も長い。
半分だけ刈り上げてある頭。
ほぼ黄色に近い金髪を後ろで纏めていた。
彼が吸っている煙草の煙が、ふぅっと私の方へと流れてくる。
「何のつもりでこんな事…」
私の問いに、笹倉という男はにやりと笑った。
「阿久津沢の首を取るためだ」
「…つまり私を人質にするつもり?」
「おー、理解が早いねぇ」と、笹倉が浅黒い肌にシワを寄せて笑う。
こんな状況にもかかわらず、私はなぜか落ち着いていた。
どうやってこの状況から抜け出せるだろう。
いや、わざわざあんな事故まで起こして私を攫ったんだ。
こんなとこまで連れてこられて、拘束されて、私がここからこっそり抜け出す確率は、ほぼ…というか確実に無いだろう。
「お前がいりゃあヤナギは来るだろ。確実にな」


