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あまりに突然のことだった。
大きな爆発のような音。
地響きすら起こしそうなエンジンの音。
眩しい車のライト。
仕組まれた…
俺は遠ざかっていく車を見つめている佐百合に、視線を向けた。
何でこんなことが起きてるんだ。
天塚高校が、一斉にこちらに仕掛けてきたに違いない。
佐百合の表情は驚いてはいるものの、いたって冷静だった。
スッと目を細めて、小さくなる車の影を見つめている。
「おい、あさひ。今すぐ全員に連絡し…ーーー」
そう振り向いたところで、俺は言葉を止めた。
あさひの顔が、これ以上ないくらいに青ざめている。
瞳が泳ぎ、何かを話そうと口をぱくぱくと動かす。
こんなに焦った表情のあさひは初めて見た。
「は、葉月さんが…ーー」
声が震えている。
「さっきまで、後ろにいたのに…、振り向いたら…いなくて…」
あぁ、マズイ。
と、俺は一瞬にして事の大事さを理解する。
全身の血液が、体の下に落ちていくような感覚。
佐百合の顔色が一瞬にして凍りついた。
身を翻し、駐車場に停めてあるバイクの元へと向かおうとする。
「ちょ、佐百合…!待てって!」
やなぎさん…と、あさひも続いて手を挙げて
二人で佐百合を止めようとするも、無言で手を弾かれてしまい、乾いた音が事故現場となったこの場所に響いた。
遠くから、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
通行人か、はたまた姉ちゃんか、誰かが通報したのだろう。
「罠だろ!どう考えても」
「だったら何」と、冷え切った声が帰ってくる。
佐百合の瞳には、俺など映っていないみたいだ。
彼の瞳にあるのは、怒りと、焦り。
さっきまでの冷静沈着だった柳 佐百合の影は消えていた。
葉月ちゃんはきっと、攫われたのだろう。
天塚の誰かに。
それはほぼ確実に、佐百合、そして俺らを誘き寄せるために違いない。


