パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-


「はぁ?天塚に襲われたァ?!」



由井くんが声を荒げたとほぼ同時に、あさひくんも似たような内容を口にする。

彼らは思わず互いに見合い、あり得ないといった表情で困惑の表情を浮かべた。


異様な空気が、私たちの間で渦巻いている。

何者かに用意された、偶然。


背後から迫るそのひやりとした感覚のせいで、嫌な汗が背中を伝っていく。

一体、何が起きていると言うのだ。



柳がゆっくりと車に近づいていく。

その背中は、柳 佐百合ではなく
阿久津沢の白百合だった。


フロントガラスの奥にある顔がにたりと歪んで、またすぐエンジン音が何度か鳴らされた。


耳障りな音と共に、車は猛スピードで発信しブレーキ痕をくっきりと残しながら街へと消えてく。



…警察に通報?


いや、まず蘭子さんに知らせなくてはいけない。



『orchid』へと続く階段に向かおうと、足を踏み出した途端、何者かがいきなり私の体を羽交締めにした。



「…っ!?」



声を上げる間もなく、口元に布のようなものを押し付けられる。



抵抗してもびくとも動かない。


抱えられるようにしてずるずると連れて行かれた先は、黒塗りの別の車。

あまりに突然すぎる出来事で、頭が回らない。


彼らに向けて叫ぼうと声を出すのに、その声は届かなかった。


車内に押し込まれ、声を上げようとしたところで、ガツンと頭に鋭い痛みが走る。



グラグラと目が周り、視界がぐにゃりと曲がる。



柳に、知らせなきゃ…



そう思うのに体が動かない。



そしてそのまま、私は眠るようにして意識を失った。