パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-


「くそ…!…なんじゃこりゃ…!」


ビルの一階は、由井くんが声を漏らしてしまうほどに、酷い有様だった。


道路に飛び出した私たち全員が、あまりの酷さに足を止める。


『タケモト不動産』と書いてある重々しい鉄製の看板がぐにゃりと曲がり、道路に面した窓ガラスが全て木っ端微塵に割れていた。

その中心に、さっきまで車がいたであろう空間がぽっかりと空いている。


くの字にねじ曲がっている支柱。



「ひどい…」



お店が開いてる時間じゃなくてよかった。

こんなの、人がいたら大変な事故に…



ブォンと、さらにエンジン音が轟く。



柳が見つめる視線の先には、一台の車。



車体の左半分がかなり傷ついて凹んでいる黒い車。

正面のライトは片方が割れ、点灯している方のライトがこちらを照らしている。


確実に、この道の先で私たちに眩しいハイビームをむけているこの車が、ビルに突っ込んだのだろう。



「ヒヒヒヒッ!」



助手席から、男が上半身を乗り出して笑った。


グレーのブレザー。

人相の悪い顔。

私も見たことがある。



天塚高校だ。



ドクンと、身体中の血管が脈打つ。

私の脳が必死で全身に信号を送っていた。

“危険だ”、と…ーーー



狂気的な笑い声。


エンジンと混ざり合ったそれは、まるでホラー映画のワンシーンのようだった。



「アイツら…」



由井くんがぎり、と奥歯を噛み締め、車を睨みつけながら怒りをこぼした刹那、あさひくんのスマホの着信音がそれを遮る。


そして仕組まれていたかのように、ほぼ同時に由井くんのスマホからも軽快な着信メロディが流れ出した。