やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。

 どんな格好していくべきなんだ。
 昨日夏菜子さんに聞いたけど任せるって言われてしまった。
 任せるって何。
 人前に出ていくような服なんてないって。

 とりあえず自分の持っている服の中で一番マシだと感じる服に着替えるが…。
 全身が緊張で震える。
 やばいってこれ。

 夏菜子さんも初ライブは緊張したのだろうか。
 うわー。すごい間違えそう。

 ど緊張から俺はエナジードリンクを一気に飲み干した。
 おかげでお腹が痛くなったが。

 ギターを持って街に繰り出す。
 夏菜子さんと合流してこのど緊張をからかわれたがそれどころではない。

 駅前に着いた。

「私がいつもやってるのはここ。」
「他にもやってる人はいるんだね。」
「まあね。その中でも私は底辺の方なんだけどね。」
「へえー。」
「まああんま緊張しないでいいと思うよ。私対して人集まんないから。」
「じゃあのびのびとやってみるよ。」
「お願いしまーす。」

 夜になってきて、人が多くなってきた。

「そろそろ始めるよ。」
「オッケー。」

 演奏を始める。

 何曲か弾いた後トークしてまた何曲か弾いてトークしてリクエストに答える感じらしい。
 2、3曲目までは間違えそうになって必死だったが、だんだん楽しくなってきた。
 自分の世界に入り込みながら夏菜子さんの歌声を聞いて。
 最高だった。

 だからこんなに多くの人が聞いているなんて気づかなかった。

 一通り演奏を終えた時大きな拍手が俺、いや俺たちを包んだ。
 俺たちの周りを囲んでいるのはざっと十数人。
 お世辞にも多いとは言えない人数なのだろうけれど、夏菜子さんから事前に聞いていた人数よりもはるかに多すぎて少しビビってしまった。

「こんばんは。私は夏菜子って言います。毎週末ここで路上ライブをしています。気になったら見ていってください。」

 周りが拍手する。
 正直こんな拍手されたことないからビビる。
 でも同時にちょっと嬉しかった。

「いつも来てくれている人はありがとうございます。いつも来てくれている人は少し疑問に思っている人もいるかもしれないんですけど今日から私と一緒に路上ライブをしてくれる仲間が増えました。」

 また拍手が起こる。
 て言うか今これからって言った?
 これからずっと一緒に路上ライブする気満々じゃん。

「慶太くんでーす。」

 マイクがこっちに向けられる。
 なんか言うの?これ。

「慶太くんでーす。」
「自分でくんって言うの?」
「緊張しすぎてごめんごめん。」

 緊張してるんだからからかってくるんじゃないよ。
 全く。

 でもこんなに楽しいのか。
 路上ライブってこんなに楽しいんだ。

 俺はこれからも続けたいって思った。

 今日のライブはまだまだこれからだ。