私は夏菜子。永見夏菜子。

 どこにでもいる女子高生。って言ったら嘘かも。
 普通の女子高生は路上ライブなんてしないだろうから。

 歌手になりたいと夢見る私は路上ライブに励んでいる。
 けど路上ライブなんて止まって聞いてくれる人の方が珍しい。
 私の場合ほとんど止まって聞いてくれない。
 だから終わった時にいるのはいつも5人ぐらい。

 私のライブ終わりに他の人のライブを聴きに行くと何十人と立ち止まって聴いている人がいた。
 こう言う人たちが有名になっていくのかなって思うと少しだけ憂鬱になる。

 私のテンションが下がる原因は他にもある。

 まずは学校。学校では初めて路上ライブのことは言ってなかった。
 でも駅前。必ず誰か通る。
 だから絶対にバレてしまうのだ。

 学校のクラスメイトにバレた私は盛大にバカにされた。
 そこからと言うもの学校では友達は1人もいない。

 そして私のテンションを下げる1番の原因。
 それが親だ
 親には今の活動を猛反対されている。
 理由は簡単。
 売れると言う見込みがないから。
 だからしっかりと勉強しろとよく言われるがやるわけない。
 学校の勉強なんてつまらないし、歌っていた方が楽しいのだから。

 これが原因で家では毎日喧嘩だ。

 嫌になって最近は毎日この公園に来ている。

 けど昨日君と出会った。
 慶太くん。君に。

 正直嬉しかった。
 毎日孤独だから久しぶりに親以外と喋ったから少しテンパっちゃって、私ばっか喋ってしまったがそこは許して欲しい。

 慶太くんに何でここに来てるのか聞かれたからここまでのことをしっかりと話した。
 私はスッキリした。
 今まで誰にも言う相手がいないからモヤモヤしていたけど聴いてくれて嬉しかった。

「そうだったんだ。」
「でも慶太くんと何となく原因一緒だね。」
「そうだな。みんな悩んでいるんだな。」
「そうだね。そろそろ弾いてよ。私歌いたい。」
「オッケー。」

 慶太くんが演奏を始める。
 彼の演奏はなぜか歌いやすい。
 なぜかわからないけど。
 聴いていて心地いい。

 そしてなんか歌いやすい。
 自分自身が歌っていて心地いい。

 そして私はふと思った。
 この人と路上ライブをしたらうまくいくんじゃないかって。
 でも彼はオッケーしてくれるかどうかはわからない。
 せっかくの出会いだし。一回ぐらい。

 彼の演奏が終わった。

「ねえ。」
「何。」
「なんかさ私たち息ぴったりじゃない?」
「それは夏菜子さんが上手いからだよ。」
「いやいや。慶太くんがうまくて歌いやすいんだよ。」
「そうか?そんなこと言われたことないからうれしいな。」

 慶太くんが照れている。
 慶太くんって意外と可愛いな。

 でも今伝えたいことはそんな事ではない。

「あのさちょっと提案なんだけどさ。」
「何?」
「私と一緒に路上ライブしませんか。」