体感では1分ぐらいたっただろうか。
 私が差し出した唇に合わせた彼の唇が離れる。

「夏菜子…ごめんね。」
「ううん。私が悪いの…。だから謝らないで。」
「いやいやお互い…。」

 私は彼がいい終わるのを待たずにキスをして遮る。

「その言葉しばらく言わないと思っていたのに…。そんな言葉で片付けないで…。」
「ごめんね…。悪かった。」

 彼の優しい顔が私の顔に映った。

「ねえ夏菜子…。」
「なに…?」
「もっと頼って、もっと甘えていいんだよ…。」
「んふふ。じゃあ…。」

 私は彼のお腹に抱きつく。
 そんな私の頭を撫ででくれる。

「そろそろこれからどうするか考えない?」
「そうだね。」

 そういうと彼は私から離れようとする。

「待って…。」
「どうした?」
「このままの状態がいい…。ずっと頭なでなでしてて欲しい…。」
「わかったよ…。」

 ありがとう…。慶太君…。

「じゃあね。今度のライブの時に夏菜子のことを言うのかどうかを決めよう。」
「うーんまだいいんじゃない。」
「そう…じ…いつ…う?」
「…いつか…。」

 私は疲れていたらしい。
 これ以降の記憶はない。

 ―――――――――――――――――

 あー寝ちゃったなあ。
 それほど疲れていたんだろうな…。

 寝顔が可愛いなぁ。

 ほっぺをツンツンしたりむにゅってしたり。

 いろいろしていると永見先輩が入ってきた。

「永見先輩!?」
「なあにやってんだ。」
「いやまあその。」
「ラブラブだな。」
「まあはい。」

 ほっぺいじってるの先生に見られちゃった…。

「解決できたってことだよな…。この状況を見ると。」
「そうですね。」
「やっぱり慶太に任せるのは正しかったみたいだ。ありがとな。」
「いえいえ。」

 正直ここまでできたのは悠真のおかげなのだ。
 あいつの一言は俺と夏菜子を救ってくれた。
 悠真は俺たちの恩人なのだ。

「慶太。もう遅いから泊まっていきな。」
「いや…。え…。」
「今は夏菜子もお前の近くにいるのが一番嬉しいだろう。」
「そうかもしれませんね。」

 先輩は出ていく。
 
 まじか…。
 思ってもいないタイミングで泊まることになっちゃったなあ。

 でも少しほっとしたのかもしれない。
 いろんなことが解決したおかげで一気にいろんなところに力が抜けた気がする。

 そう考えるとだんだん眠くなってきて。

 夏菜子のいい匂いと涙の匂いを嗅ぎながら眠りについた。

 ――――――――――――――――

 翌日から俺たちは再び路上ライブに向けて準備をすることにした。

 夏菜子の声はいつまで持つかはわからない。
 だからこそ1日1日を大切にしたいと思った。

 そして夏菜子の声が無くなっても絶対愛し続ける。
 そう誓った。