「わかった。おまえに相談する。」
「そうこなくちゃ。」

 やべえ。このテンション腹立つ。やっぱりいうのやめようかな。
 でも誰かに話したかったし、言うか…。

 俺たちは駅前のカフェに場所を移した。

「単刀直入に言うぞ。夏菜子が病気になったんだ…。」
「そうか…。で…。どんな病気なんだ。」
「原因はわからない。でも喉の病気だ。」
「はあ。声帯か?」
「まあそうだ。」

 自分で言っていて泣きそうだ。
 何で俺が泣くんだ。
 病気になったのは俺じゃないんだから。

「そうか。で今は。」
「2人で喋るどころか連絡も取れない。」
「引きこもったか…。」
「ああ。昨日最後の会ったんだけど喧嘩になっちゃって。」
「無責任な言葉でもかけたのか。」
「俺はそのつもりないんだけど。」

 俺は夏菜子を励ましたかった。ただそれだけなんだけど…。

「自分は励ましたつもりだけど傷つけたってことか…。」
「そうだね…。」

 もっと力になりたかったのに…。

「おまえさ…。」
「なに…?」
「本当にそのままでいいの…?」
「は…?」
「そのままでいいのか…?」

 何いってんのこいつ。

「今はそのままの方がいいでしょう。」
「そんなことない…。」
「何でだよ。このまま心配し続けて傷つけたらどうしようもないでしょ…。」
「それが本当に一番だと思うか…?」

 なんで。夏菜子が傷つかないならそれでいいんだよ。

「彼に夏菜子さんが傷つかなかったとしてもだよ、1人でいる時間がどれだけ苦しいのか分かんないだろ。」
「それは分かんないけど…。」
「俺も中学生の時に大きな病気になってさ…。すげえ苦しくて…。毎日両親が心配してくれるんだけどこいつらには俺の苦しみはわかんないんだって思ったら腹が立って来て…。部屋で篭っちゃった…。でもその1人の時間がすごい苦しかった。」

 そうなんだ…。知らなかった。

「死んでやろうかとも思ったさ…。でもそんな時救ってくれたのは姉ちゃんでさ。俺にすごい怒ってくれたんだよ。」
「なんて…?」
「おまえが一番辛いかもしれないけど、辛いのがおまえだけだと思うなよって。」
「そうなんだ…。」
「あの言葉は痺れたね…。確かに両親も辛いだろうなって。お姉ちゃんもそうだし。でもとにかくこのまま1人でいたらそのまま死んでいたかもな…。」
「そんな…。」
「まあ何でもかんでも優しくすることだけが、その人に対する優しさだと思うなよ。時には怒んないと…。」

 夏菜子ごめん…。優しくばっかしちゃって。

「とにかく夏菜子さんのとこ行ってしっかり叱ってこい!苦しいのはおまえだけじゃないぞって。」

 俺はカフェを飛び出した。

 待ってて夏菜子…。