「毎日ここで会いませんか。」
実際毎日暇だからこうやって用事ができるのはありがたい。
「いいですよ。」
「本当ですか?!」
「もちろんですよ。逆にここで嘘つかないですよ。」
「そりゃそうですよね。」
「じゃあここに8時でどうですか。」
「わかりました。」
彼女と出会って人生が変わるかもしれない。
そんな勘が働いた。
翌日。行く理由のない、単位を取るためだけに行く学校に行く。
いつも早く終われと思っている学校だが、今日は余計に早く終われと思っている。
だって昨日会った子との待ち合わせがあるから。
今思い返してみても楽しかったと思う。
久しぶりにギターを弾いたっていうのもあるだろうけど、自分のギターで歌ってくれる人が居たってこと。
それが一番自分にとって嬉しかったと思う。
今まで一緒に馬鹿みたいに騒いでいた奴らを横目で見ながら俺は読書を続けた。
夜約束の20時。
約束通り彼女は来た。
「久しぶり。」
「久しぶりって言っても昨日だぞ。」
「あ。そっか。」
この2日間で分かったことは二つ。
夏菜子さんは歌が上手い。
これは誰から見てもわかること。
二つ目は思ったよりも天然なとこ。
昨日今日で久しぶりって言う会話が出てくるわけがないのに出てきちゃうところが天然だな。
「慶太さんギターで弾くとしたら何が得意ですか。」
「うーん。あまり得意不得意はないかも。広く浅くいろんな歌を弾いてる感じ。夏菜子さんは?」
「まあ。私もそうかも。てか何で昨日はここにいたんですか?」
「何でって?」
「私最近この時間になるとこの公園に来てたんだけど、あなたを見たのなんか初めてだったから。」
そうだったのか。
俺よりこの公園の常連だったらしい。
「まあ。最近うまく行ってなくてさ。」
「学校ですか?」
「まあ学校も家も。」
「何かあったんですか。」
「学校は友達と意見がすれ違った時に喧嘩になっちゃったり、家では親の喧嘩に巻き込まれてギターを禁止されたり。親が離婚した後もイライラするからやめてくれって言われちゃって。」
「そうだったんですね。」
「ああ。で耐えられなくなってさ。どうしてもギターが弾きたかったから。で、この公園を見つけたってわけ。」
「そうだったんですね。」
何だかスッキリした。
学校でもみんなからハブられている俺が相談できる相手はいなかったから。
今の自分の気持ちを素直に吐き出せてよかった。
何だか夏菜子さんに出会えてよかったな。
と言うか何で夏菜子さんは毎日ここに来ているんだろうか。
少し気になってしまった。
「夏菜子さんはどうしてこの公園に来ているんですか?」
彼女はこう答えた。
「私にも色々あるのよ。」