「おーい。どうだったんだ?」

 お兄ちゃんが尋ねてくる。

「風邪って言われたんだけど一応紹介状出しときますねって。」
「紹介状…?」
「大きい病院で診てもらえって言われた。」
「そっか…。明日行こうか。なるべく早い方がいいんじゃない?」
「でも風邪なんでしょ。それなのに紹介状って…。やっぱヤブ医者ばっかじゃん。」
「まあ。何かあるよりはいいでしょ。」

 その日はなかなか眠れなかった。
 風邪だって言われているのに何かどこかで不安になっている自分がいる。
 何もないといいけどな…。

 その日はなかなか眠れなかった。

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「あー。バズってんなぁ。」

 俺たちの歌っている動画がとにかくネットに出回りまくっている。
 そして投稿された動画の全てがなかなかの再生回数を誇っている。

 最高。

 この言葉が一番合うのかもしれない。

 それより夏菜子がまた熱を出してしまったらしい。
 体調がすぐれない夏菜子が心配だ。

 でも夏祭りではしゃぎすぎた影響も少しはあるのかもな。
 はしゃぐのもそこそこにしておくべきだった。

 はあ。寝れねえ。

 あの時勢いでキスしちゃったけど大丈夫なのか…?
 不安だ。
 まあでも付き合っているってことはオッケーってことなのか…?

 ――――――――――――――――――

 翌日私はお兄ちゃんと一緒に大きな病院に行った。

 なんとかかんとか検査とかなんかとかウイーンってされたりとか。
 カタカナがいっぱいありすぎてよくわかんない。

「永見さーん。8番のお部屋にどうぞー。」

 呼ばれた。これからは診察に入る。

「永見夏菜子さんとそのお兄様ですか?」
「はい。」

 そこでお医者さんが何かを見せてくる。

「永見さんの病気は原因不明です。
「へ?」

 原因不明…?
 なんかまたヤブ医者がなんかいってるよ。

「実は喉や声帯が腫れています。何らかの原因でそこに傷が付きそこから病原体が入ったのかと思ったのですが…。」
「ですが…?」
「未知のウイルスでした。」

 はい…?何いってんのこの人。ミチ…?

「ちゃんと調べたのか?おい。」

 お兄ちゃんが口を開く。怒ってる。
 こんなお兄ちゃん見たことない。

「ちゃんと調べたのかって聞いてんだよ。」
「はいもちろん調べました。ですが全てのウイルスが陰性でしたので。」
「調べ残しはないのか?」
「はい。」
「じゃあ何だよ未知のウイルスって。」
「実は最近そうやって言って病院に来られる方が全国で今月に入ってから4人目なんですよ。」

 はあ?何いってんのこの人。じゃあ未知じゃないじゃん。

「すでにそのウイルスについて調べているのでとりあえずは…。」
「何でそんな無責任なんですか?」
「最悪の事態にならないように一緒に頑張りましょう。」

 私家に帰れないの?

「家には帰れないんですか?」
「いえ。帰れます。このウイルスは人から人への感染はしないことがわかっています。指定感染症でもないので病床で入院の受け入れもできません。この病院も満床なので。」

 帰れるならまだ…。でもありえない。私が病気だなんて。

 これからどうしたら…。