うわぁ…。
そうだよな…。
人多いよな…。
感染症の流行などによって夏祭りがここ最近中止されていたと言うこともあって、ありえないほどの人がいた。
さすがの夏菜子もここまでの人の多さには流石に引いているように見える。
「人…。多いね…。」
「そうだね…。」
俺たちは緊張しすぎているのかこれだけしか会話が出て来ない。
そして俺の頭の中はもうやばいしかない。
やばいなやばい。
うん。やばいやばい。
ものすんごくやばい。
今やばいって何回言ったんだ?
でも大丈夫。俺たちがやるのは少し外れたセカンドステージってとこ。
センターステージでは有名人がライブしたりとかしてそこまでこっちには人は来ない。
いろんな人に見てほしい気持ちはあるけれど、いきなりそんなに人が来たら緊張でどうかなってしまうからこのぐらいが丁度いいと思う。
「おぉ。来たか。」
お父さんが話しかけてきた。
「なんかさ…。人多くない…?」
「まあな。久しぶりの祭りだしみんな盛り上がってるんだなぁ。あ、初めましてだよな。慶太をよろしく。」
「あ…。はい…。初めまして…。」
いや。関わり方考えて。
初めましてだよね。
なんか馴れ馴れしくない?
夏菜子困ってるって。
「お父さん。とりあえずどこでやるのか案内して。」
「ああ。ついてきな。」
いつもの出し物的なやつは外れた一角でやることは知っている。
だからここまで人がいるって言ってもそんな来ないと思う。
夏菜子にもそうやって昨日説明してあるからわかっているはず。
「ここだ。」
お父さんが案内してきたここは。
「お父さんここってセンターステージじゃないの?」
「そうだけど、どうしたんだ?」
「いやだってさ出し物って向こうのステージじゃないの?」
「ああ。そこだけど。」
え?じゃあここじゃないじゃん。
「お前たちは別に出し物で呼んだんじゃないよ。」
「へ?」
「ライブ。」
『ライブ!?』
意味がわからんて。
聞いてないって。
お父さんがプログラムを渡してくる。
おいおい。俺たちの前も後ろも有名人じゃねえか。
まじかよまじかよ。
「本当にここでやるんですか…?」
「ああ。そうだよ。」
「ええ…。」
流石の夏菜子も少し動揺している。
「なんだ2人とも。ビビってるの?」
「ビビってないわよ。」
あ、強気な夏菜子が出た。
「じゃあ胸張って行ってこい!」
俺たちはお父さんにバシッと背中を叩かれた。
そして控室らしきところに入ると…。
「ふぁああ…。」
夏菜子が聞いたこともない声を出した。
それもそのはず。
いつもならテレビの中にいる人たちが今目の前にいるんだもの。
「夏菜子ー。聞いてるかー。」
「あ。ごめんごめん。見惚れてた。」
「色々サインとかは後回しだよ。ライブが終わってからね。」
「そうだね。」
俺たちは楽屋に入る。
「てかさ。こんなに有名な人がいるのによく1時間ももらえたね。」
「確かにそうだな。」
俺たちの伝説のライブが近づいてきた。