お兄ちゃんが持ってきてくれた解熱剤のおかげでだいぶ熱が下がった。
 熱が下がればだいぶ楽になる。

 目を覚ますとお兄ちゃんがいた。

「ずっといたの…?」
「まあな。心配で仕方ないから。」

 お兄ちゃんは優しいけれど少し過保護すぎる。
 別にそんぐらい自分でできるってこともやってくれるから、バカにしてんのかって思う時もある。

 でもそんなお兄ちゃんも大好き。

「ありがとう…。」
「何か欲しいのは?」
「ゼリーとプリンと飴。」
「なんか贅沢だな。」

 いいでしょ別に。
 どうせ持ってきてくれるんだし。
 妹のわがままはなんでも聞いてくれるんだし。

 1人でぶつぶつ言っていたらもう持ってきてくれたらしい。

「何ぶつぶつ言ってんだよ。」
「別に。なんでもいいでしょ。」
「まあな。プリンなんかいっぱいあってどれがいいか分からんかったから全部持ってきた。」
「じゃあこれとこれとこれ。」
「三つも食うのか?」
「ダメ?」
「元気じゃあねえか。」

 お兄ちゃんは「そろそろ勉強しないと」って言って部屋を出て行った。

 はあ。
 このまま歌い手になりたいんだったら喉は大事にしなきゃ行けないのに。
 何やってんだ…。私…。

 慶太くんに連絡をするとすぐに返信が返ってきた。
 やっぱり待っていてくれたのかな。
 申し訳ないな。

 まあそんなところが可愛いの私。
 これは慶太くんのセリフじゃないよ。
 元カレのきもいセリフ。

 

 あ、そうだ慶太くんに連絡してない。

 時計を見るとすでに短針が8を指している。

 やっべー。もう慶太くんついているのかな。

 慶太くんに連絡してもう一度眠りにつく。
 また慶太くんとライブしたいんだから早く治さないと。

 そう思って眠りについた。

 ――――――――――――――――――

 家に帰るとお父さんが待っていた。

 いつもはこうやって待っている時は以上なほどの圧があったのだが今日はない。

「慶太。こっちにこい。」

 呼ばれた。
 俺今日そんな変なことしてないと思うけどな。

「先生から聞いたぞ。」

 あ。その話か…。

「うん。」
「本当に音楽系に進みたいんだな。」
「そうだよ。」
「路上ライブもしてるんだってな。」
「うん。」

 この間はなんだろう…。
 またダメだって言われるのかな…。

 ドキドキしながらお父さんの反応を待つ…。

「俺は応援するぞ。」
「へ?」
「俺は応援する。ただな条件が2つある。」
「なに?」

 俺の心臓が速くなる…。
 なにをさせられるんだ…。

「一つ目。絶対に諦めない事と後悔しない事。」
「はい。」

 当たり前だ。
 絶対諦めないし後悔するつもりはない。

「これは約束できるか?」
「もちろん。絶対諦めないし後悔するつもりはない。」
「いい意気込みだ。」

 よく考えたらお父さんが久しぶりに俺のやる事を肯定してくれていると思う。
 久しぶりすぎて少し驚いているし、嬉しい。

「じゃあ二つ目。来週夏祭りがあるのは知っているよな。」
「ああ。」
「で、路上ライブをしてるんだろう。」
「うん。」

 うわ…。
 なんか嫌な予感。

 確か夏祭りって実行委員の出し物あったよな…。
 で今年の実行委員にお父さんがいるってことは…。

「お祭りでライブをしなさい。」

 ですよね…。
 そう来ると思ったけれど…。