「本当に音楽関係に就きたいんだな。」
「はい。」
「俺は応援するぞ。」
え?
そうなの?
じゃあ何で呼び出されてしまったんだ?
「俺、この前お前が頑張っているところ見ちゃったんだよな。」
「どういうことですか。」
「いいライブだったよ。」
先生も路上ライブに来ていたのか。
「でも夢を叶えるのは簡単じゃないぞ。」
「まあそれはわかってますけれど。」
「応援してるからな。」
先生がそんなふうに言ってくれるなんて考えてもいなかった。
早く帰って夏菜子に伝えないと。
毎日の約束の日。
約束の時間になっても夏菜子は現れなかった。
ふと携帯を見ると通知が入っていた。
『喉が痛くて熱が出てて。だから今日は行けそうにないの。ごめんね。連絡遅くなっちゃってごめんなさい。』
歌い手たるもの喉は大事にしないとダメ。
だからしょうがないか。
今日の話は直接会ってしたいし。
『大丈夫だよ。お大事にね。』
これだけ送ると夏菜子からは熊がごめんねと言っているスタンプが送られてきた。
それに俺はお大事にと言うスタンプを送り返す。
せっかく時間があるし曲作ろっと。
どうしようかな。
恋愛ソングとか?
恋愛ソングに入れたいフレーズを探そう。
うーんどうしようかな。
「恋」とか?
でもなんか単純すぎないか?
「好き」とか?
これも単純だな。
ラブソングって案外難しいんだな。
そう考えるとラブソングばっか歌っている歌手の人ってすごいな。
夢中になって考えているとあっという間に時間は過ぎ去ってしまっていた。
時計を見るともうすでに22時だ。
「もう帰ろうかな。夏菜子もいないし。」
――――――――――――――――
喉が痛い…。
今まででこんなに痛いことあったっけ。
熱も出てしんどい。
親に病院に行くか聞かれたけれど私はいかないって言ってしまったからなあ。
いまさら行きたいなんて言えないよ…。
辛くて寝込んでいるときだった。
お兄ちゃんが部屋に入ってくる。
「おいおい大丈夫か?」
「いや全然大丈夫じゃないかも…。」
お兄ちゃんが私のおでこに手を当てる。
「うわあ。これすごい熱出てるな。」
「うん…。」
「本当に大丈夫だったのか?」
「いや今は大丈夫じゃないかも。」
親に病院に行くか聞かれた時はまだ大丈夫だったけれど今になってしんどくなってきた。
「熱があるなら解熱剤だけ持ってきてやるよ。」
「ありがとう…。」
やっぱりお兄ちゃんは優しい。
私の誇りのお兄ちゃん…。
お兄ちゃんが解熱剤を持ってきてくれた。
「ほら…。これ飲んでもうちょっと寝てろよ…。」
「うん。ありがとう…。」