「今度の土曜日雨だね。」

 俺たちは今日もいつもの公園で雑談をする。

「路上ライブはどうするの?」
「流石にやらないよ。色々機材が駄目になっちゃう。」
「そりゃそうだよね。」

 今週が雨ならまた1週間待たないといけない。
 まだ先週の興奮が冷めない俺は早く路上ライブをしたくて仕方がないのだ。

「ねえ。何でお兄ちゃんと慶太くん知り合いって教えてくれなかったのよ。」
「いやいや。知らなかったからでしょ。」
「名字一緒なんだから聞いてくれてもいいでしょ。」
「それで違ったときすごい気まずいでしょ。」
「まあそっか。」

 路上ライブの日。
 俺が夏菜子に送った『ありがとう』の連絡が竜真先輩に見られたらしい。
 久しぶりぶりに竜真先輩から連絡が来たのも嬉しくて驚いたけれど、まさか夏菜子のお兄ちゃんだったとは。

「お兄ちゃん感謝してたよ慶太くんに。しかもめっちゃ褒めてた。」
「いやいや。竜真先輩に褒められるほど僕何もしてないよ。」
「そう言うところだよ。」
「え?」
「そう言う謙虚なところがすごいって言ってた。」
「いやいやそんなことないよ。」
「ギターもすごい上手いって。」
「そこまでじゃないって。俺が竜真先輩に敵うわけがないんだから。俺の目標は今も竜真先輩なんだから。」

 夏菜子が俺のいいところって言ってすごい語ってくれている。
 これ並みに竜真先輩もすごいって言ってくれたらしいけれど、竜真先輩にはまだ敵わない。
 そこは謙虚とかじゃなくて絶対。

「もうちょっと調子に乗ってもいいんだよ。」
「いやいや乗らないよ。」
「何でよ。もっと自慢していっていいと思う。」
「自慢する相手もいないからな。」

 夏菜子は何でこんないい人が学校でハブられてるのか、わからないとずっと言ってくれている。
 ありがたいことだけど人のことを見下して調子に乗ってる奴らが正直嫌いだ。
 だから調子乗っていいと言われても絶対に乗らないと誓う。

「でも夏菜子も謙虚だと思うよ。」
「え?そう?」
「うん。じゃないとお互い様って言って終わるような会話なんてないよ。
「そんなことないよ。慶太くんの方がすごいんだもん。慶太くんのこと上から見下せるわけがないんだもん。」
「いやいや。そんなことないって。」
「また始まっちゃった。お互い様だね。」
「だね。」

 前までは自分が路上ライブなんて始めるなんて思っても見なかった。
 逆に尊敬してた。
 路上ライブって言って頑張ってる人を尊敬してた。

 だから夏菜子の方がすごいんだよ。
 そう言いたいけどお互い様で終わってしまいそうだからこれ以上は言わないけど。

 あ、そうだそうだ。
 もっと言わないといけないことがあったんだっけ。

「そういえば、曲できたよ。」