「なあ。路上ライブしてた?」

 そう話しかけてきたのは絶交したはずの悠真。
 俺が大喧嘩した帝女の彼氏。

 今思い出しただけでも腹が立つが、帝女の嘘に乗せられ俺のことを罵ってきたため俺が絶交だといいだしたのだが…。

 こいつは自覚してないのだろう。
 それともそもそも俺に話しかけていないのかもしれない。

 そう思って俺は無視をしたのだが…。

「おい慶太。無視すんなって。あの件はごめん。俺が何も知らないまま詰め寄って。申し訳ない。」
「俺に話しかけてきてたんだ。」
「当たり前だろ。」

 いや当たり前じゃないだろ。
 お前がいなければ女子から嫌われるだけで済んだのに、男子にも変なこと言うから本格的に干されちまったんだ。

「で、何のよう。」
「これお前だろ。」

 そこには俺の土曜日の路上ライブの様子が写っていた。
「何で知ってるんだよ。」
「俺さあの子の歌声が好きで毎回行ける時はいつも行ってたんだけどさ。一昨日行ったらまさかのお前が居たってわけだ。」
「はあ。」
「何だよお前がこの子と仲がいいなら紹介してくれたってよかったじゃないか。」

 こいつ、こんなに鬱陶しかったっけ。
 しばらく会わないうちにかなりうざくなっているんだが。
 それともファンだからなのか。

「なあなあ。次もお前が出るのか?」
「まあそうだけど。」
「おーいみんなこいつが路上ライブやるらしいぜ。」

 バカかこいつはって思ったけどみんな一切反応しない。
 ちょっとぐらい『おー。』とか言ってみたらどうなんだろう。
 悠真には腹が立ったし、クラスのみんなのせいでかなり傷ついた。

 さすがにクラスから干されていると言ったってそれはないだろうと思っていると、こいつはさらなる爆弾を投下する。

「みんななんか反応してやれよ。」

 ニヤニヤしながらこいつは呟く。

 俺は感じたこいつら全員俺になんかしてるな。と。
 そしてこいつの顔を今すぐ蹴り飛ばしたくなった。
 ニヤニヤしながらこっちを見る目が。
 きもい。

 そしてあり得ない言葉を口にする。

「お前ってこんな人気なかったっけ。」
「てめええええええええええええのせええだろおお。」

 俺は出したこともない声を上げる。
 悠真はそれでもまだ話かけてくる。

 だから俺は『お前は出禁だ。』と発してそれ以降の話は一切聞いていない。

 正直こんなやつに構っている暇はない。
 何でも弾けるとかイキっていたけれど弾けない曲が何曲かあった。

 だからその練習をしたいのだから正直こいつは黙って欲しい。

 早く夏菜子に会いたい。
 早く夏菜子と演奏したい。
 今はそれしか考えられない。