お嬢様が後宮へと召し上げられるその日、私は旦那様と一緒に王宮へと向かった。

 お嬢様のためにと国主様があつらえさせた美しい着物を身にまとい、羅紗を頭から深く被って顔が見えないようにすれば、ひと目見ただけでは私とわからない。

 それだけじゃない。私とお嬢様は背格好が似ていたから、親しい人でなければまず偽物だと発覚したりはしない。だからこそ、私が身代わりになって時間を稼ぐと旦那様に申し出たのだ。

 現に、門番や店まで来たという使者には怪しまれずに御殿の奥まで案内してもらえた。「どうして羅紗を被っているのか」と聞かれたものの、旦那様が打ち合わせ通りに理由を伝えるとあっさり納得してくれた。玉座まで連れて行くと迎えにきた役人も信じてはくれた。


「気の毒なことだが……国主様は慈悲深いお方だ。其方の事情は汲んでくれよう」

「はい、ですので御目通りは後日ということに……」

「いや、それはならん。国主様はそれはそれは楽しみにしておられたのだ」