目の前に大きめの池が広がっていた。

 人の手で造られたのだろうその池は、蓮の葉や花が浮き見ているだけで涼しくなって──いや嘘、服とか全部脱いで飛び込みたい。泳ぎたい。

 周囲には誰もいないのを確認して、私は履きものを脱いで、上衣と裳をたくし上げて足をつけた。さすがに素っ裸になって水浴びをする度胸はない。

 ……これも十分に恥ずかしいことだけど。


「あんた、大胆だなぁ!」


 後少ししたら出て、部屋に戻ろう。そう決めた私の背後から──しかもかなり近くから──野太い声が聞こえた。悲しいかな、幻聴ではなさそうだ。

 声の主は「暑いもんな、今日は」とひとり言を口にしながら私の隣りに座って自分も池に足を浸した。男のよく日に焼けた逞しい膝と、私のそこそこがっしりした足が並ぶ。

 さて、どう切り抜けるか。