ドンドン…!
「すいません!どなたかいらっしゃいませんか?」
ドンドン…!
迷惑も省みず、力の限り
玄関らしい引き戸を叩いた。
三回目でようやく玄関に灯がつき、
ガラガラと戸が開いた。
「うるさいの!そんな叩いたら戸が破れるで!」
そう言って、現れたのは白髪まじりで
小肥りの初老の女性だった。
「すいませんが、電話お借りできますか?
携帯が使えないんで。」
と言うと流石にその初老のおばさんは
「電話なら…ホラ、そこにあるで。」
と少しキレ気味に応えた。
「すみません、お借りします。」
と詫びながら俺は
昭和30年代を思わせるような
懐かしい香のする黒電話の受話器をとった。

