二人仲良く人力車に乗り、脚は赤のブランケットで覆い、最初の『さんまち』へと向かう。『さんまち』に着くと、彼女の案内で一之町の三筋の古い町並みを散策した。
ここには東京の目まぐるしいせわしさや冷たさはなく、全てが温かく俺を包み込んでくれるようだった。
途中、京都の和菓子屋を感じさせる店で、団子を食べながら休んだ。
「ここ高山はね、金森長近が京都をまねて造った町なんだよ。知ってた?」
「ううん。だからか…町並みが碁盤目になってるのは。」
「そう。」
「でもいいよな。何か…嫌なことがあっても、こういう場所で暮らしてると忘れられる気がする。」
「アタシもそう思う。落ち着くんだよね。」

