俺は荷物を部屋に置き、そのままの格好で部屋を出ると彼女が待っていてくれた。
「待っててくれたんだ。」
「はい。」
「じゃ、行こうか?」
「人力車…呼んでますけど、良かったですか?勝手に呼んで…。」
「人力車か…一度乗って見たいって思ってたんだよ!」
するとまた、ヘヘっと笑いながら上目使いで…アーサと同じ目で俺を見上げる。
その度に胸はキュンと小さな悲鳴をあげる。
俺達が階段を下りると、すでに玄関の前には人力車が待っていた。まだ外は2月の終わりで、高山は雪深く瓦屋根や軒下は雪が積もっている。
それでも俺の心は少しだけ春の風が吹きかけていた。理由は単純で、舞ちゃんとのデート…というより、仮にアーサでないにしても、全てにアーサを感じられていたからだった。

