「じゃ舞ちゃん、お客さんを菖蒲の間にご案内して!」
「はい!それではお履物はこちらに。」と言って彼女は俺を促す。
俺は靴を脱ぎ、言われた下駄箱に靴を入れようとしていると、急に彼女が振り向き
「蓉子さん!あのね、お客さんがこれから白兎の郷に行きたいだって。どうかな?」と聞いた。
「白兎の郷(さと)は、今からじゃ無理よ!一日かけて行かないと…白川郷のムコウなんだから。でも…これからだったら、『さんまち』とか『陣屋』がいいんじゃない?」
と蓉子さんが勧めてくれると、彼女は「やっぱり無理みたいです。それでいいですか?」と申し訳なさそうに俺を見た。

