「俺……白兎(ハクト)の郷に行ってみたいんだけど。」
と探るように言ってみた。
「う〜ん…白兎の郷(さと)ですか?流星群はまだ一週間後だよ。」
「その日も行きたいんだけど、その前にちょっとだけ行ってみたいんだけど…駄目かな?」
「じゃ、帰って蓉子さんに聞いてみますね。」
「蓉子さんって?」
「蓉子さんは民宿の娘さんで、アタシにとってはお姉さんみたいな人かな…。」
「そうなんだ。」
そんな話をしてるうちに、民宿に着いた。
予約した民宿は京都の町屋の雰囲気があり、道路に面した壁一面が梁組の格子戸になっていた。
入口を入ると土間が奥まで続いていて、右側には大きな囲炉裏がある和室。
天井は二階まで大きな柱と梁で組まれた見事な吹き抜けになっている。
彼女は土間に入ると「おばさん!ただいま!お客さんお着きです。」と叫んだ。
しかし中からは返事がなく、水を打ったような静けさに心は自然と緊張を強いられた。
その緊張を煽る静けさを破るように彼女はさっきよりも大きな声で「おばさ〜ん!いないの?」と叫ぶ。

