…どうも、と曖昧に頷いて、私は、恐る恐るベンチの椅子に腰を下ろして戻る。
「なに、翠さん照れてんの?」
「は?照れてませんけど」
寝起きで目の下のくまもすごいことになっているだろう。顔もむくんで大きい気がする。
私は異常なほどの癖毛で、雨の日は湿気で髪が爆発するしで、髪をくくっただけなのに。
それなのに、私を褒めてくれるとか。
よく、わからない。まあ、別にどうでもいいか。何も思わないように、涙を拭う。
「俺、翠さんのこと好きなんだけど、」
どうして、私の髪型を誉めてくれる時は顔を赤らめるのに、好きだと伝えてくれる時は、そんなに真っ直ぐに、言えるのだろう。
「だから、4日間苦しかった。やっと会えた」
彼は立ち上がる。だからって、私がいなかったから苦しかったみたいに彼は言う。
「もう、天塔翠を、俺のものにしちゃいたいくらい」
え、と思わず息を飲む。いつの間にか、私は動く桜色の唇を見つめてしまっている。
慌てて目をそらして、雨が降る方に顔を向ける。
何を意識してしまっているんだろう、本当に気持ち悪い。私は、笑みを浮かべて笑う。
「……はは。私、可愛くも綺麗でもないし。どす黒くて性格はゴミみたいなもんだし。バカみたいに全部どうでもよくなっちゃうし」
私は、そんな奴だった。何もかも考えないようにして、ずっと笑みを浮かべている。気持ち悪い奴だろう。


