「あの、朝くん、おはよう」


―雨の音は続いている。一向に止むことを知らない雨の音が、病室に響き続ける。窓から雨風が吹いても、枯れたクローバーは揺れずにいた。

朝くんに連れられて病院に帰ってきたのだ。

私はベッドに腰を下ろして座り、朝くんは、隣にあるパイプ椅子に座っている。

病室に彼がいるという謎の違和感に、どうしてもついていけなかった。


「なに急に」

「いや、私、言ってなかったんで、一応」


3ヶ月も互いの生存確認すらできてかったくせに、朝くんは私に躊躇なく語りかけてくれる。そこが、どこか嬉しくあった。


「ん、おはよ」


私が言いたかっただけだったのだが、朝くんは当たり前のように言い返してくれる。これが2回目だということにも関わらず、だ。


「まあどうせ、また寝ちゃうんだけどね」


笑みを浮かべながら、窓を見やった。

目を、合わせたくなかったから。


「また3ヶ月も寝たっていうショックで死にたくなって、彷徨ってたんでしょ?何も持たず、こんな大雨の中を。俺がいなかったら、まじで死んでたんじゃない?」


無意識なのか少し頬を膨らませて、怒り口調な朝くんに、私は黙ってこくんと頷く。

私から話す会話が見当たらない。3ヶ月間何してた?なんて、私がどうせ傷つくだけだ、私は、どうせ眠ってしまうだけの人間なのに、今更、何を話したらいいのだろうか。


「起きてくれてよかった。ほんとに」

「…また、寝ちゃうのに?」


え?朝くんは、どこか惚けた顔をする。