まどろみ3秒前


「いつから、降り続けてるんですか」


やっぱり、彼は泣いていた。

私でも拭えないほどに涙が溢れていく。


「…っ翠さん…俺は…俺……」

「答えてよ、朝くん」


勝手に、口から名前が漏れる。


「翠さんが、眠ってから、ずっと」

「…3ヶ月も」

「俺は死んだように生きてたから、晴れなのか雨なのか、知るわけがない」


なんだかこの台詞、聞いたことがあるような、そんな気がする。


「俺からしたら、この雨が、今この瞬間までずっと降ってた。…あなたがいない俺の世界は、ずっと、雨が降っている………」


返す言葉がなかった。

彼の頭を、私は、ポンポンと撫でるしかなくて。


「…あー、俺のこと撫でてくれるんですね。誰かもわかんないくせに」

「……まあ、私も撫でられたら嬉しいんで」


我慢できなかったのか、ぶはっと彼は涙を流す。どうして私の前で、こんなに泣いているんだろう。私にとって朝くんは、朝くんにとって私は、一体どんな存在だったのだろう。

ズキンズキンと規則的に頭に痛みが走る。心臓がなる度に、息をする度に。


「ねぇ、翠さん」


なんだろう、この声は…


「大好きだよ」

「…え?」


雨の音が鳴る心臓の音をかき消していく。


「ああ、やっと言えた。ずっと、言いたかったから。止みそうもない雨が降ってきたから会える気がして、学校帰りにウロウロしてたら……まじで会えちゃったから…」


俺ってやっぱ運いい、なんて、優しい笑い方で笑っていた。

ひとつ傘の下、彼は私を、優しくて、どこか愛おしいような眼差しで見つめる。