まどろみ3秒前


どこへ、行けばいいんだろう。自分はどこへ行きたいんだろう。誰に、会いたいんだろう。


赤い傘は、暴風雨によって今にも破れそうだった。強い風、強く降り落ちる雨。傘に落ち、跳ね返る雨粒の音を聞きながら、私はただ歩いた。

足が疲れても、頭が痛くなっても、服が濡れても、傘が逆さになっても直して、また、歩いた。


やがて、私は、足を止めた。


行く場もなく、待ってくれてる人もいない。私は何のために歩くんだろう。下を向いて、やけくそに、また1歩、踏み出してみる。

久しぶりに歩いたからか、足首が痛い。頭も痛くなってきた。どうしよう。病院まで帰れるか?スマホも持たずに来てしまった。


ああ、起きたのに、溺れてるみたい。足掻いても足掻いても、息苦しくて沈んでいって。

いずれ、長く眠ったら、私は忘れられるんだろうな。この世界から、消えてなくなる。


でも、今、誰かを求めて歩いている。

その誰かに、教えてほしかったな。


―その時、私ではない靴の音がした。


こんな暴風雨の中に、歩く靴の音が?

そんな靴音は、雨の音と共に、止まった。


「…えっ」


靴音の持ち主は、何故か、道のど真ん中で足を止めている。黒い傘を手にさしていた。

雨のせいで辺りは薄暗く、その上黒い傘で顔がよく見えない。だが、制服を着ていることは目で見てわかった。学校からの帰り道か。

もうそんな時間なのか、もう夜が来るのか。下を向きながら通りすぎようと足を早める。