医者は、悩みに悩みまくった結果、私に従ってくれるらしかった。3ヶ月、お母さんの心配してた表情を見てきたも関わらず、私の思いが伝わったのだろうか。
3ヶ月も眠った子供が起きたのに、親に見せない。そんな大罪を犯している僕は、医者をクビになるかもしれないんだぞ、なんて私に言ってきたが、別にそんなことはどうでもよかった。
お母さんもお父さんも累も、きっと心配してくれていただろう。春から夏になった、3ヶ月という長い時間は、もう返ってこない。
累は、高校生か。きっとうまくやっていることだろう。
高校3年なんて、大学受験だの就職だの色々とあるんだろう。なんて、他人事だった。
頭が、空っぽになった。感情が薄れる。
何がしたいのかわからず、病室のベッドに座って、ぼーっと窓の先の雨を目で追う。
―待ってるから、ずっと。
急に、誰かの声が頭に響く。ズキン、ズキンと、心臓がなる度に頭痛が走る。
―天、塔翠さんですよね?
名前、間違えてる。いつの、記憶?
―俺、あなたと死ぬのが夢なんで。
雨の音がする。
―俺は、翠さんのことが好き。
雨の匂い。
―俺は、くま深いほうが好きだけど。
果実の淡い匂い…
―世界がどんなに変わっても、俺は、どうせずっと変わらないで待ってる。


