まどろみ3秒前


「怖い…嫌だなぁ…」


こんな自分の体が嫌になる。

瞼を閉じるのが、こんなに怖いなんて。世界できっと、私だけだろう。

自分の体では起きるくせに、自分でもわからないなんて勝手がすぎる。

今、瞼を瞑ってしまえば、もう瞼が開くことはないかもしれない。何十年、何百年後に、私の瞼が開くかもしれない。


私は、たったひとり、夢に溺れて眠る。

起きたら、誰も私のこと覚えてないかな。


夜風が、頬を微かに過ぎていく。

四つ葉のクローバーが、優しく揺れていた。笑顔で公園のクローバーを取ってきてくれた、朝くんの顔が鮮明に蘇る。

枯れてしまうことはないだろうか。この四つ葉のクローバーが心配になる。


―大丈夫。


朝くんは優しくそう言ってくれた。どうしてか、魔法のように、大丈夫だと思えてきてしまった。












ああ、いつからだろう。

生きている感覚がしなくなったのは。

死んでいるわけではない。

楽しい、嬉しい、辛い、悲しい、怖い。そんな色んな感情を殺して、私はいつだって笑っていた。感情なんてもの、端からなかったかのようにしていたみたいだ。



「一緒に、溺れよっか」


また、あの夢の続き。

深海のように沈んだ世界で、私は、わからない誰かと沈んでいく。

もっともっと、溺れていく。

息ができない、苦しい。水中だと、やっぱり足掻いてもどうにもならなかった。