「怖い…嫌だなぁ…」
こんな自分の体が嫌になる。
瞼を閉じるのが、こんなに怖いなんて。世界できっと、私だけだろう。
自分の体では起きるくせに、自分でもわからないなんて勝手がすぎる。
今、瞼を瞑ってしまえば、もう瞼が開くことはないかもしれない。何十年、何百年後に、私の瞼が開くかもしれない。
私は、たったひとり、夢に溺れて眠る。
起きたら、誰も私のこと覚えてないかな。
夜風が、頬を微かに過ぎていく。
四つ葉のクローバーが、優しく揺れていた。笑顔で公園のクローバーを取ってきてくれた、朝くんの顔が鮮明に蘇る。
枯れてしまうことはないだろうか。この四つ葉のクローバーが心配になる。
―大丈夫。
朝くんは優しくそう言ってくれた。どうしてか、魔法のように、大丈夫だと思えてきてしまった。
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ああ、いつからだろう。
生きている感覚がしなくなったのは。
死んでいるわけではない。
楽しい、嬉しい、辛い、悲しい、怖い。そんな色んな感情を殺して、私はいつだって笑っていた。感情なんてもの、端からなかったかのようにしていたみたいだ。
「一緒に、溺れよっか」
また、あの夢の続き。
深海のように沈んだ世界で、私は、わからない誰かと沈んでいく。
もっともっと、溺れていく。
息ができない、苦しい。水中だと、やっぱり足掻いてもどうにもならなかった。


