「累ね、翠が眠ってた時、何回も何回も翠の部屋に行って翠の状態を見てたりしてたんだよ。翠に、声かけたり体揺さったりして起こしたりもしてた。…でも、一向に、翠は目を覚まさないから、不安だったんだと思うよ」
「…そう、だったんだ」
「心配してるんだよ。翠が思ってる以上に。だからお母さん達、翠を待ってる。翠が家にいてくれるだけで、私達は幸せなんだから」
うん、と私は深く頷く。
私は、今までもずっと変な勘違いをしていた。私は、受け入れられているこの家の、家族なのに。私がいるから、家族になるのに。
「じゃあ、おやすみ。また連絡してね」
「うん、おやすみ。また」
手を振って、お母さんが扉から出る。その背中は、私の目に強く焼き残されたように感じた。
―深い夜になった。
窓を網戸に開いて、夜風を部屋に入れ込んだ。光は、月の光だけだった。四つ葉のクローバーは、優しい風に揺られている。
病室にあるベッドに体を包む。ひとり取り残された途端、強烈な不安に襲われる。
長く眠る際に感じる、違和感のようなものだ。ズキズキと、頭が痛い。どこか吐き気がする。息苦しく、胸が痛かった。
私は病気だ。私は眠りすぎてしまう、病気。いつ起きるかわからない、病気。


