「…っありがと。高校、頑張れ」


立ち上がって累の胸の前に拳を作ってやると、「ん、頑張る」と累は、私と同じように拳を作って頷いた。


「それで、絶対この茶髪を黒に染める」

「え、なんで染めんの!?」

「だって嫌だもん。地毛なのに染めてるとか言われるんだよ?…まあ、また姉ちゃんに見せてあげる。黒髪でイケメンな俺を、ね?」


はっはっはと笑う累の目が、どこか潤んでいるように見えた。そのまま、累は「おやすみ」とだけ言って病室を出て行った。

照れ臭かったのだろう。いつまでも変わらず、きっと、累は子供染みて可愛いままだな。


すると、病室の扉が開いた。また累かと思えば、お母さんだった。


「あれ、累は?お母さんのとこ行ったと思うんだけど」


するとお母さんは、一度廊下に目を向けて頷いた。


「…今そこの廊下にいるよ。お姉ちゃんが家にいなくなるから寂しかったのか、泣いてた。あの子、あんまり泣かないのに」


平気な顔して累は…

どこか、胸がぎゅっと痛んだ。