「四つ葉のプレゼントか。…いいけど、センスないな、彼氏のくせして」


花瓶を手に持った累は、四つ葉の葉をツンツンしながら言った。思わず笑ってしまう。


「俺だったらクローバーなんかプレゼントしないけど。そりゃあ彼女にだもん」

「安眠グッズとしてくれたんだよ?」

「え、安眠グッズ?このクローバーが?」

「ね。ほんと、頭おかしい」


言ったあとに、あ、と思い出した。彼氏じゃないという否定を忘れていた。


…でも、もういいか。









私は、我が家とお父さんにさよならを告げて、家を出た。お母さんと弟の累が、少ない荷物を持って、一緒にきてくれた。


暗い夜道を抜けると、大きな建物が見えてくる。もう、何度も訪れた場所だ。

空には、丸く大きな満月が出ていた。その横に、薄暗い雲が浮かんでいる。微かに雨の匂いもする。明日は、雨が降るのだろうか。


「こんばんは、天塔さん」


白衣を着た若い医者と、後ろには看護婦らしきショートカットのお姉さんが迎えてくれた。