まどろみ3秒前


「……朝陽を一緒に見たとき、前に、俺にひとりじゃないって言ってくれたときも」


曖昧な記憶の中から、必死に思い出そうとするだけで、情けないことに精一杯だった。

朝くんはひるを拾い上げて、胸にぎゅっと抱き寄せる。きょろっとした目をして、ひるは、暴れずにじっとしていた。


「翠さんに、俺のことを言おうとしたんだけど」

「…うん」

「俺は、結局弱虫だから無理だった。言葉にできなくて言ったらどうなるかって、怖かった。…生まれて初めて、人を、こんなにも好きになったから」


だから、朝くんは続ける。


「翠さんに俺のことを話したら、また前…いや、夕のときみたいに、壊れるって思った」

「こわ、れる?東花…?」

「でももう待つのは、俺だけがいいから」


曖昧にこくりと頷くと、朝くんは元に戻ったように、優しく笑った。


話す怖さなら私でもわかる。

何を、話されるのだろうか。

私は聞くために、どんなことができるのか。そうしっかりと噛み締めて思った。


朝くんは私の隣に座る。ひとつ呼吸をして、朝くんは続ける。


「俺の父親、医者なんだけど、知ってるでしょ?」


その時、朝くんの茶色い目と、あの医者の目が重なった。思い出した、あの言葉を。


―実はね。僕の息子も君と同じように、何の病かわからない、恐ろしい病気を患っていてね…



「まさか」



―天塔さんと、重なるなぁ…