「……治らない。絆創膏なんて貼っても、どうせ治らないくせに」
朝くんは、むっと頬を膨らませて手の甲に貼り付けた絆創膏を指でいじる。
「治るよ」
私は、出来るだけ優しい口調で言った。
その時、東花の傷のことを思い出した。
手の甲の傷と、重なる。全く同じ、傷の位置、傷の深さ、傷の長さ、傷の痛々しさ…
「…同じ」
はっと気付いて口を閉じる。
「夕と?」
首を振ろうにも、振れずにいた。
夕の傷のこと知ってたのか、なんて朝くんは他人事のように笑う。その笑い方は、いつもの朝くんじゃなかった。
「……この傷は朝が負わせた、だからあいつと離れろって、東花に言われたんよね」
はは、と卑屈に笑う私に朝くんは、どこか嬉そうに「へぇ、それで?」とニヤッと笑う。
「翠さんは、俺と離れたくなった?」
「……えっ」
「俺は、人を自分を傷付ける、怖い奴だから。一緒に、いたくなくなった?」
まさか、そんなことを言うなんてそんな……
私との距離を縮める朝くんに、思わず、反射的に離れてしまった。


