まどろみ3秒前


「……治らない。絆創膏なんて貼っても、どうせ治らないくせに」


朝くんは、むっと頬を膨らませて手の甲に貼り付けた絆創膏を指でいじる。


「治るよ」


私は、出来るだけ優しい口調で言った。


その時、東花の傷のことを思い出した。

手の甲の傷と、重なる。全く同じ、傷の位置、傷の深さ、傷の長さ、傷の痛々しさ…


「…同じ」


はっと気付いて口を閉じる。


「夕と?」


首を振ろうにも、振れずにいた。

夕の傷のこと知ってたのか、なんて朝くんは他人事のように笑う。その笑い方は、いつもの朝くんじゃなかった。


「……この傷は朝が負わせた、だからあいつと離れろって、東花に言われたんよね」


はは、と卑屈に笑う私に朝くんは、どこか嬉そうに「へぇ、それで?」とニヤッと笑う。


「翠さんは、俺と離れたくなった?」

「……えっ」

「俺は、人を自分を傷付ける、怖い奴だから。一緒に、いたくなくなった?」


まさか、そんなことを言うなんてそんな……


私との距離を縮める朝くんに、思わず、反射的に離れてしまった。