「あのさ姉ちゃん。聞いてもいい?」
食パンを焼きかじりつきながら、「んー?」と耳を澄ませる。若干だけど、声変わりしたのか声が大人っぽく聞こえる気がする。
「彼氏できた?」
「ぶぐっ…」
思わず、パンの小麦粉が口から出そうになった。咳き込む私は、「な、なんで」と聞く。
「あ、できたんだ」
「いや、できてないけど」
今度は真剣に言った。
これは嘘でもなく、彼氏いないしできていない。弟に変な誤解をされては困る。
なのに、何故かパンを口から出してしまいそうになる自分が、よくわからない。
「あの日の夜、彼氏さんの家泊まってたでしょ?」
「はは。なにそれ、泊まってない泊まってない」
あのオールした日。あれは家にも行ってないし、本当に泊まってない。ただ、朝陽を一緒にバス停で見ただけであって。
「んで、友達に勉強教えてもらいに行ってたり遊びに行ったりしてたけど、あれ、彼氏さんだよね?俺、もうわかるんだ」
まるで探偵のように言う累に、私は負けん気で「彼氏じゃない」と強い口調で言った。
「ほんと?姉ちゃん、あの四つ葉を持ってきた時、すっごい見たことないくらいランランして嬉しそうだったなぁ。ま、別にいいけど」
抱きしめられたりあーんとかされたけど、あれは違う。ただ、なんだろう。
友達でもない、恋人でもない。よくわからない関係だ。
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