「夜が怖いのは、朝くんだけじゃないから」

「…だから、何が」

「暗くて静かな夜は、眠る夜は、辛い夜は、皆、怖くて怯えながら過ごすんだよ」

「…」

「だから、だから、1人じゃないから」


クローバーを持つ逆の手で、私は朝くんの手を包み込んだ。とても、その手は冷たい。


クローバーが風で揺れる。ワンピースを着た通りすがりのお姉さんのスカートも靡く。朝くんの黒い髪も、私の茶色い髪も、揺れる。

私は知っている。朝くんの目の奥の色を。


崩壊を夢見ているみたいでその目が好きだと、朝くんは私に言ってくれた。

でも、言えないくらいに、朝くんだって、そんな空虚な目、してるんだよ。


「さ、帰ろっか」


夕陽色に導かれた道を、私達は進んだ。