「キモいしどうでもいいんだよね、ニワトリがコケコッコー騒いでんのとか。ね?翠さんもそう思うでしょ」
朝くんは私に同意を求めるようにこちらを向いて、ふっとバカにしたように鼻で笑う。
「嫌なものは、嫌なんだよ」
優しい人。なんでこんなに、優しいんだろう。私の思っていることを、そのまま、言葉にしてくれる、そんな人だった。
「なぁ、お前らさぁ?俺の大切な時間汚すな?キモいからまじで殺すよ?わかった?」
「…っ」
言い返そうとしたらしいひとりの男子は、唇を噛むように何も言えなくなっていた。なんだか、私にも彼らがニワトリに見えてきた。
高身長の朝くんに、怖い目付きで見下ろされるのが、どうやら怖かったみたい。
私は、すく様に逃げ出した。朝くんの手をひいて、やっとのこと、走って逃げた。
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「ぁはぁはぁ…疲れ…た」
「この状況さっきも見た」
あの場所から遠くへ、走ってきた。人通りも多い中、周りの人からどんな目で見られようと、私は朝くんを引っ張って走り続けた。
路地裏のような場所に来た。この場所は、誰からも見つけられないし見えないはずだ。


