まどろみ3秒前


「ぁはぁはぁ…疲れ…た」


息切れが激しい。最近、運動してなかったからだろう。言い訳をすれば、眠ってたから。

私を前に朝くんは、全然平気そうな顔をして、私をただ、呆れた表情で見ている。


「いやいや、なんで走るんだか」


駅のホームを出て、少しの距離を走った。私が手を掴んだまま走ってきたのが悪いけど。


「ごめん、なさい…なんか恥ずかしくて」

「はぁ?なにが」


肩をすくめる朝くんは、突然ふらりとどこかに行ってしまった。

帰ってきたと思えば、朝くんは、水の入ったペットボトルを「ん」と私の頬に当ててきた。冷たい感触に、思わず顔を上げる。


「な、なにこれ」

「水。…飲んでないから大丈夫だって」


東花にも同じこと言われたな、なんて思いながらありがたく受け取った。


「ほら、行こ?」

「どどこに…」

「安眠グッズ、買いに行くんじゃないの?」


いたずらっぽく笑った彼を見て思い出した。そうだった、私が安心して眠れるようにって安眠グッズを…

いや、安眠グッズ?

今更意味がわからない。なんだそれ。私の病気をバカにでもしているんだろうか。

―でも、別になんでもいい。


朝くんに、会えれば、それでよかった。

どこへでも行くし、なんでもいい。