「ぁはぁはぁ…疲れ…た」
息切れが激しい。最近、運動してなかったからだろう。言い訳をすれば、眠ってたから。
私を前に朝くんは、全然平気そうな顔をして、私をただ、呆れた表情で見ている。
「いやいや、なんで走るんだか」
駅のホームを出て、少しの距離を走った。私が手を掴んだまま走ってきたのが悪いけど。
「ごめん、なさい…なんか恥ずかしくて」
「はぁ?なにが」
肩をすくめる朝くんは、突然ふらりとどこかに行ってしまった。
帰ってきたと思えば、朝くんは、水の入ったペットボトルを「ん」と私の頬に当ててきた。冷たい感触に、思わず顔を上げる。
「な、なにこれ」
「水。…飲んでないから大丈夫だって」
東花にも同じこと言われたな、なんて思いながらありがたく受け取った。
「ほら、行こ?」
「どどこに…」
「安眠グッズ、買いに行くんじゃないの?」
いたずらっぽく笑った彼を見て思い出した。そうだった、私が安心して眠れるようにって安眠グッズを…
いや、安眠グッズ?
今更意味がわからない。なんだそれ。私の病気をバカにでもしているんだろうか。
―でも、別になんでもいい。
朝くんに、会えれば、それでよかった。
どこへでも行くし、なんでもいい。


