心は、そんな弱虫だった。ずっと、弱虫で。笑って誤魔化して、繕うことしかできない。
朝くんには、病気のことも深くは言ってない。長い、スリープ状態に入ることも。
朝くんは、私が言わなければ何も聞かないだろう。優しい人だし、透き通る朝くんの瞳には、私の心が読まれているようだから。
「―ねぇ、翠さん」
ここは、どこだろう?
気が付いたら、私は電車に揺れていた。規則的に電車の動く音がする。
「ぼーっとしてるけど」
「あーいや、ごめん」
何でもないように首を振る。
電車の窓からは、日が差していた。川は、青い空や空を跨ぐ飛行機、建物、電車の線路までも反射する。
青い空と桜。今日は、絶好の春の日だ。
「あ、そういえば翠さん私服?」
「まあ、だったら朝くんも」
「何気に初めてじゃん。嬉し」
ふふ、と笑う朝くんが本当に嬉しそうで、なんだか私も笑えてきてしまった。
待ち合わせ場所を指定してきたというわけもあって、あと流石の春休みなので、私は家にあった私服を選んできた。
ちょっとだけ、髪もメイクも服も頑張ったんだけどなぁ…、まあ、似合ってるとか別にいらないんだけどなぁ…、
なんて思っていると、「似合ってる」と、ずるいくらいに、私の耳に囁いてきた。


