それでも、朝くんは一切とバカにせず、「あー」と考えてくれた。
「まあ、俺は、綺麗になったけど」
「…え?」
「気付いたことがある。俺の目に映る、この世界の全ては、全部、俺のものだってこと」
朝くんの、もの?私がただ単にバカなのか、あまり意味がわからなかった。この世界は、皆のものじゃないんだろうか。
「翠さんのものでもあんだよ?」
優しく、朝くんは微笑んだ。
「同じ方から見ても、見れる空や桜はこの瞬間にしかなくて。色も状況も匂いも、俺にしか感じれなくて見れないもので。よく忘れちゃうけど、…怖い夜も、全部俺のものだった」
今度は、朝くんの髪に桜が付いていた。面白いのでそのまま放っておこうと思っていたが、取ってやった。取った桜を見つめる。
「きれい」
私が言うと、朝くんは目を開け、少し驚いた表情をする。
「言葉にできないもんだね。桜の散る姿も、空の青さも匂いも、誰かを想う気持ちも…言葉にできないもので、世界は溢れてる」
桜をぎゅっと、握りしめた。
「…誰が言ってんの」
ツッコミを返そうと笑って口を開こうとしたが、何も、言葉にできなくて、。


