「いいよ」
意外にも軽く言われてしまい、私は朝くんにとってそんなもんな人間か、とどこか胸が痛くなって、泣いてしまいそうになった。
すると、横に向けたスマホを片手に、朝くんは、青い空に悠々と高く上げた。
桜が後ろに映る。
そして、小さな枠に映っていたのは、どこか充血し涙を堪えているのが丸見えな、映り悪すぎ、顔むくみ目の下くま野郎女の、私。
そして、隣には、朝くんがいた。
スマホを持つのに慣れてないのか、落としそうになりながらも隙間を埋めるように私に近づく。
「っえ」
「これで、俺を忘れなくできるでしょ?」
「待って私映り悪っ…ちょっと整えさ―」
―パシャ
初めてだった。写真を、撮られたらしい。
2人、2ショット写真。
綺麗な春の桜、ピースした朝くん、焦りながらも笑顔を作る私。
写真の中は、2人、時が止まったように笑っている。永遠に、残り続けてくれるような気がした。
「うわ、やっぱ翠さんくまやばいな」
笑いながらいじり散らかす朝くんに向けて、じろっと睨み付けてやった。
「嘘うそ。俺は、くま深い方が好きだから」
意味のわからない慰めの褒め言葉をくれた朝くんは、もう一度スマホに目を落とし、心底、嬉しそうに笑っていた。
まあ朝くんは撮り直す発送が端からないらしい。それもまたいいな、と思い笑った。


