まどろみ3秒前


「いいよ」


意外にも軽く言われてしまい、私は朝くんにとってそんなもんな人間か、とどこか胸が痛くなって、泣いてしまいそうになった。

すると、横に向けたスマホを片手に、朝くんは、青い空に悠々と高く上げた。

桜が後ろに映る。

そして、小さな枠に映っていたのは、どこか充血し涙を堪えているのが丸見えな、映り悪すぎ、顔むくみ目の下くま野郎女の、私。

そして、隣には、朝くんがいた。


スマホを持つのに慣れてないのか、落としそうになりながらも隙間を埋めるように私に近づく。


「っえ」

「これで、俺を忘れなくできるでしょ?」

「待って私映り悪っ…ちょっと整えさ―」


―パシャ


初めてだった。写真を、撮られたらしい。

2人、2ショット写真。

綺麗な春の桜、ピースした朝くん、焦りながらも笑顔を作る私。

写真の中は、2人、時が止まったように笑っている。永遠に、残り続けてくれるような気がした。


「うわ、やっぱ翠さんくまやばいな」


笑いながらいじり散らかす朝くんに向けて、じろっと睨み付けてやった。


「嘘うそ。俺は、くま深い方が好きだから」


意味のわからない慰めの褒め言葉をくれた朝くんは、もう一度スマホに目を落とし、心底、嬉しそうに笑っていた。

まあ朝くんは撮り直す発送が端からないらしい。それもまたいいな、と思い笑った。