まどろみ3秒前


「翠、翠、すい!!!!」


何度も、スマホに叫んだ。

周囲の人の視線を感じる。


「ごめん、ごめん翠!!!」

『な、なに言ってんの怖いんだけど』


望んでいた、翠の声ではない。驚いたような口調をする夜野くんの声だ。


「翠でしょ、そこにいるのは…!!!」

『…誰、友達?』


そこにいる誰かに語り掛けるように、夜野くんは言った。間違いない、翠はそこにいる。

しばらく、何もない静寂の時間が流れる。


『あーごめん、なんか本人話したくなさそうだから。切るね』

「待って待って!!!翠に言いたいことが!お願い、お願い夜野くん……」

『は?だるいんだけど。俺の大切な時間をなんでお前みたいなんかに―って、あ、』


その時だった。何年ぶりかのその声が聞こえた瞬間、私の目からは涙が溢れた。


『柚?』

「翠…」

『なに、言いたいことって、なに?』


嗚咽が漏れながらも、私は、何も考えず必死に言った。