「翠、翠、すい!!!!」
何度も、スマホに叫んだ。
周囲の人の視線を感じる。
「ごめん、ごめん翠!!!」
『な、なに言ってんの怖いんだけど』
望んでいた、翠の声ではない。驚いたような口調をする夜野くんの声だ。
「翠でしょ、そこにいるのは…!!!」
『…誰、友達?』
そこにいる誰かに語り掛けるように、夜野くんは言った。間違いない、翠はそこにいる。
しばらく、何もない静寂の時間が流れる。
『あーごめん、なんか本人話したくなさそうだから。切るね』
「待って待って!!!翠に言いたいことが!お願い、お願い夜野くん……」
『は?だるいんだけど。俺の大切な時間をなんでお前みたいなんかに―って、あ、』
その時だった。何年ぶりかのその声が聞こえた瞬間、私の目からは涙が溢れた。
『柚?』
「翠…」
『なに、言いたいことって、なに?』
嗚咽が漏れながらも、私は、何も考えず必死に言った。


