いや、とりあえず今は恥ずかしい。この話がまた廊下にまで漏れてないかと心配になる。
「翠」
「うん?」
東花は、シャッターの取っ手を握ったまま、振り返って言った。
「起きてくれてよかった」
小鳥にも言われた言葉。今の私は、この言葉がいちばん欲しい言葉だった。
「何度も言うけど、俺は、翠のことが好きだった。それだけ」
「…ありがと」
東花の言ってくれた好き、という言葉は、どこか震えている。
好きとか言うの慣れてないんだろうな、なんて思うとどこか可愛いらしくて笑ってしまった。
「あ、朝には内緒で」
人差し指を立てて、薄く微笑む東花はとても綺麗だった。そのままシャッターを開けて、東花は保健室から出た。
保健室の扉が閉まる音が聞こえるまで、私はじっと、耳を澄ませていた。
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「ごめんお待たせ!!…あれ東花くんは?」
回りをキョロキョロと見渡す小鳥。シャッターは開かれ、保健室には光が満ちていた。
「な、なんか帰った」
「えーそうなんだ」
少し残念そうに肩を落とす小鳥に、私は正直に思っていることを聞いてみた。


