「東花、」
「俺じゃだめだった?」
いつもツンツンしている犬のようだが、今の東花は違い、小さな子犬のように見えた。今度は私が、すぐさま首を振る。
「東花、ありがとう。最近よく話しかけてくれるのも、朝くんと関わってる私を心配してくれてたからでしょ?だから、」
優しい口調を心がけて言ったつもりが、「違う」と東花は頑固拒否し首を振った。
ひとつ呼吸をして、東花は「翠、俺はね、」とどこか優しい口調で話し始める。
「翠に、本当の笑顔で俺に笑いかけてほしかっただけ。…それだけだった。心配とかどうでもよくて、ただの…なんていうか…」
恥ずかしそうに斜めに視線が落ち、頬を赤に染める。初めて見る、東花の表情だった。
「ど、え、ど、え?」
変な言葉が出ても、東花は笑ってくれない。
笑わそうと、「え、えーやきもち?」なんて軽く冗談で言ってみる。


