飲もうかと迷いながら、そのペットボトルを手に取って見つめる。
「買ってきた。いやこれ、飲んでないから」
いやわかってるし、と笑いながら感謝して、ありがたく受け取ることにした。
保健室の中だと物音も声もなく、ただ、しんと静かだった。修了式も近くて今日は短縮授業だったらしい。部活もなく、学校は静けさに包まれていた。
「体、しんどい?」
「…しんどい」
東花は、パイプ椅子に座った。
大丈夫か?と聞かれて大丈夫、と言ってしまう辛さを、東花はきっと、知っている。
大丈夫か、と聞かずにしんどいか、と聞く東花は、言葉の使い方や地味な気遣いが本当にうまいと思った。
頭は痛いし、体が重い。倒れたのだからそれは当然なのだろうが。
「熱は?あんの?」
おでこに当てるだけで測れる最新の体温計を手渡され測ってみると、熱はなく、平熱だった。
「…長く休んでた理由、風邪って嘘なんだろ。倒れたのも、なんか理由が」
何も言えずに、情けなく黙り込んだ。そうだ、私は風邪ではない。あの時間、眠っていた。
嘘ばかりな自分が、どんどん、嫌いになっていく。それは、自分自身で嘘をついたのに。
「…謝んなきゃいけないことがある」
東花の声が静寂に響き渡る。


