「全部知ってた。見てないフリ、してた」
「…」
「私と翠が歩いてるだけで陰口たたかれて。いじめて殴られる方がマシじゃないかっていうくらい、私にも愚痴とか噂たたかれて」
「こ、小鳥にも…?」
それは、知らなかった。まさか、小鳥も私といるせいで愚痴とか言われてるなんて…
「嫌いになりかけてた。翠は別に、一緒に帰ってただけの人なのになんで私がって」
「…でしょ?私、話も面白くないし。笑うばかりで全然、小鳥に心を開けないから」
私は、笑みを浮かべることしか出来ない。そんな私に、小鳥は「でもね、」と続ける。
「どうしてなんだろーね。翠のこと、嫌いって言えなかった。嫌いになれなかったなぁ」
朝くんが言っていた。嫌いにならなければならないのに、嫌いになれなかったこと。
「翠と、私自身だと思うんだよね。翠が、私に心を開いてくれるのも、私が、翠に心を開くのも」
「…うん」
「やっぱり翠は、優しくて明るくて、面白くて笑顔で。他にはいない、大好きな、私の友達だったんだよ…」
そんなことないよ、と言おうとしたけど口を紡いだ。面白いのも、笑顔なのも、私は笑みを貼り付けて逃げてるためだけの、作り物だ。
それでも、小鳥といたあの時間は、楽しかった。辛くても私には、大切で尊い時間だった。


