まどろみ3秒前


「全部知ってた。見てないフリ、してた」

「…」

「私と翠が歩いてるだけで陰口たたかれて。いじめて殴られる方がマシじゃないかっていうくらい、私にも愚痴とか噂たたかれて」

「こ、小鳥にも…?」


それは、知らなかった。まさか、小鳥も私といるせいで愚痴とか言われてるなんて…


「嫌いになりかけてた。翠は別に、一緒に帰ってただけの人なのになんで私がって」

「…でしょ?私、話も面白くないし。笑うばかりで全然、小鳥に心を開けないから」


私は、笑みを浮かべることしか出来ない。そんな私に、小鳥は「でもね、」と続ける。


「どうしてなんだろーね。翠のこと、嫌いって言えなかった。嫌いになれなかったなぁ」


朝くんが言っていた。嫌いにならなければならないのに、嫌いになれなかったこと。


「翠と、私自身だと思うんだよね。翠が、私に心を開いてくれるのも、私が、翠に心を開くのも」

「…うん」

「やっぱり翠は、優しくて明るくて、面白くて笑顔で。他にはいない、大好きな、私の友達だったんだよ…」


そんなことないよ、と言おうとしたけど口を紡いだ。面白いのも、笑顔なのも、私は笑みを貼り付けて逃げてるためだけの、作り物だ。

それでも、小鳥といたあの時間は、楽しかった。辛くても私には、大切で尊い時間だった。